「歯科診療の真価を伝える」

  “自分の価値観”で消費する人々
脱工業化社会が進む中で、『規格品の大量生産』は時代の価値観にそぐわなくなった感がありましたが、 多くのマーケティング研究者や企業の販売企画担当者は、『規格品の大量生産』によって生み出される 『安ければ良い』という製品やサービスにも一定の存在価値を認めています。
その理由は消費動向の多様化で、消費者個々人がそれぞれの価値観に基づいて行う『消費に対する差別化』がより鮮明になってきたためだというものです。
つまり消費者個々人が持つ消費対象物にかける思い入れやこだわりの差異が『安ければ良いもの』と『高くて質の良いもの』を峻別することになった結果、限りある家計の中では 『高くて質の良いもの』を手に入れるために『安ければ良いもの』も当然必要になってきた というわけです。

かつては、ブランド品を身にまとった人はそれなりのレストランで食事をし、高級車は高級住宅街のお屋敷のガレージに納まり、 グリーン車には重役然とした紳士が本を片手にゆったりと座っていたものです。“分をわきまえる”規範が存在したものです。
その規範が崩れたのは、戦後の平等教育と経済成長の“成果”のひとつである『国民総中流意識』の醸成です。 ブランド品も、海外旅行も、高級車も、平然と豊かさが広まった結果、一般庶民が“分際”を超えて購入できるようになったのです。


更に、自分が求める生活の質を維持するため『新たな物差し』によって『消費を厳選』するという『コストをかけずに質は維持したい』という価値観が浸透し始めています。
アウトレットモールの繁盛振りはそれを端的に表しています。『満足度は落とさない範囲で見栄や体裁は捨てる』が新しい生き方でもあるようです。

「不況だから保険で・・・」は失格歯科医師のセリフ


不況が長引き雇用情勢が好転しないと、「今は自由診療を勧める時代ではない。保険診療主体で堅実に対応すべきだ」と考える院長も多いのかもしれません。
その考えは今の時代の消費トレンドを本質で捉えていないように思えますし、第一、あまりにも医療人としての誇りに欠ける自己経済中心の考え方だと言えます。
『自由診療経営』とは、常に最善最適の医療の提供を自由なやり方で訴え続ける経営のことです。時流に乗って受けを狙い、金儲けすることを目指すことでは断じてありません。

今こそ歯科治療の真価の伝え方を考えよう


ただ、独善的な自由診療経営はいただけません。やはり相手のあることですので、今の消費者が置かれている立場に理解を示し、 その感性や考え方をよく知ったうえで、提供しようとする歯科医療の価値をどのようにポジショニングし、いかに伝えていけば理解や共感が得られるのかを考えなければならないでしょう。
それができた時、今起きている新しい消費動向が大きな機会を作ってくれることになるでしょう。

現代の消費者は、自分が求める『生活の質』を維持するため『新たな物差し』によって『消費を厳選』し、 『高くても質の良いもの』を手に入れるために『安ければ良いもの』を求めるようになっています。

歯科医療は『生活の質』を維持するどころか向上させることができますので、 現代消費者が厳選する消費の対象に必ずなり得る要素に満ちています。この歯科医療の真価を現代の消費感性に訴えていかなくてはならない のです。 「不景気なので保険主体で・・・」などと考える歯科医院は、消費者の『消費を厳選』する目を通して『安ければ良いもの』の一つに組み入れられてしまうことでしょう。


この文章は、株式会社DBMコンサルティング発行「Management Club Report Aug.2009/Vol.80」 宮原秀三郎著「Monthly Opinion『朱に交われば赤くなる』」の内容を一部抜粋したものです。




メニュー